「何回のレッスンで話せるようになりますか?」


初級者の方々から良く尋ねられる質問です。答えを知りたいお気持ちは良く分かりますが、結論から言いますと、これはそもそもするべき質問ではないと思います。

逆に考えてみてください。もしも日本語をほとんど話せない外国人の方に「何レッスンで日本語を話せるようになりますか?」と尋ねられたら何と答えるべきでしょう? 1レッスン平均1時間だと計算して「100時間」とでも答えるべきでしょうか?

単純に時間の話でもありません。同じレッスン数でもインストラクターの力量にもよるでしょうし、それにも増して重要なのは生徒さんの気概です。 漫然とレッスンだけを受けて終わる人と、復習を怠らず、次回のレッスンまでに前回の内容をしっかり把握してくるような人とでは進歩の度合いに雲泥の差が出ることは言うまでもありません。

また、何をもって「話せる」と言えるのかも明確ではありません。例えば私の教室にもTOEICで800点以上を取り、英語をかなり「話せる」生徒さんがいますが、もしもこの生徒さんに「英語を話せます?」と誰かが尋ねたら、間違いなく「少しだけ」あるいは「まだまだです」とお答えになるでしょう。これは決して謙遜なさっているのではなく、自身の英語力を本当にその程度と見なしているからです。一方、初級者の方がこの生徒さんが英語で話している様子を見れば、この人は「英語が話せる!」と尊敬のまなざしを向けるはずです。

私が個人的に考える「話せる」のレベルは「自分の考えや気持ちをある程度正確に伝えることができる」です。「ある程度」というのがまた微妙ですが、このレベルに求められる英語力は、実際の物事や出来事を説明するのに求められる英語力の上をいきます。例えば何かの小説を読んだ場合、英語でその粗筋を説明するよりも、物語に対する感想を述べる方が遥かに難しいでしょう。そして、このレベルへの到達こそが英語に限らず、外国語学習の最終目標であるべきだと私は考えます。

日本に留まり、どこかの英会話学校でせいぜい週1回1レッスンを受け続けたとして、このレベルに達するのはかなり非現実的です。生徒さんの気概について上で触れましたが、余程の英語バカでも無い限りは無理でしょう。日本にいながら、独学でこのレベルに到達する学習者も確かにいらっしゃるのですが、本当に例外中の例外です。

私は他の英会話スクールが使っているような「英語を話せるようになります」といった宣伝文句を用いることには相当慎重な態度を取っています。あくまでも「皆さんの英語学習のサポートをいたします」というのが私の立場であり、残念ながらそれが限界でもあります。学習者の皆さんも特別な事情が無い限り、「話せるようになる!」を目標にする必要は無いと思います。あくまでも趣味や教養として楽しみながら英語を学んでいくべきです。 「いつまでたっても英語が話せるようになれない・・・」と悲観する必要もありません。そもそも「なれない」のが当然なのですから・・・。